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新英語教育研究会神奈川支部HP

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ビューティフル・ボーイ beautiful Boy

「新英語教育」2000年10月号「英語に歌を」の元原稿: Beautiful Boy


■ Beautiful Boy (John Lennon) ビューティフル・ボーイ(♪ジョン・レノン)

目を閉じて
こわがらないで
モンスターは行っちゃった
逃げている最中だ
そして、パパはここにいる
ビューティフル・ビューティフル・ビューティフル
ビューティフル・ボーイ

寝る前に
お祈りを言いなさい
毎日、
いろいろ
良くなって行くから

人生という)海に出て渡っていく…
もう待てない
おまえが大人になるのを見るのを
でも、僕らは2人して
がまんすることになるね
行くのに長い道のりだから
耕すのに大変な列」だから。
そう、行く道は長いのだから。

ところで、その間
道を渡るときは
手を取ってくれよ
人生というのはね、
他の計画を立てていて忙しくしている間のことを言うのさ
愛するショーンよ

■ジョンが歌に込めた人生と人生観
 ジョン・レノンは1940年10月9日英国リバプールに生まれ、60年5月、ビートルズ結成、68年先妻シンシアと離婚、69年オノ・ヨーコと結婚、70年ビートルズ解散、75年に息子ショーンの育児のため音楽活動を5年間休止して主夫(househusband)になり、音楽活動再開直後、1980年12月8日ピストルで撃たれて死亡。
 こういう略歴を持つジョン・レノン。ただ者ではない。自分の人生をそのまま歌い、人生観を歌に込めている。そのいくつかを紹介したい。
Mother
 3歳の時に家族を捨てた父、17歳の時に自動車にひかれて死亡した母。Father, you left me... I needed you so bad. You didnユt need me. I’m just gonna tell you good-bye.(お父さん、あなたは私を置き去った。ものすごく必要だったのに。あなたには私が必要ではなかった。ただ、さよならと言うよ。)と強がりを歌ったその直後、Mother, don’t go. Daddy, come home.(お母さん、行かないで。お父さん、帰ってきて)と絶叫するジョン。こんな直球を投げつけられると返す言葉が見つからない。(私が持っているCDではライブで熱唱するジョンに観客がウオォーと歓声を上げている。日本なら、しんみりしてしまいそうだが…。)
Strawberry Fields Forever
 「ビートルズでいちばん好きな歌は?」と投票すると、「日本ではYesterday、英国ではStrawberry Fields Forever」と聞いたことがある。その歌詞を追ってみると、「一緒に行かないかい、ストロベリーフィールズに行くんだ。リアルなものはない。こだわりもない。ストロベリーフィールズよ永遠に」。
 この虚無感はどこから来るのか? 次の英語の童謡がその問いに答えてくれそうである。
 Row, row, row your boat. Gently down the stream. Merrily, merrily, merrily, merrily. Life is but a dream.「漕げ漕げボートを、やさしく流れを下って、楽しく楽しく楽しく楽しく、人生は夢にすぎない」などという、急転直下、人生の深淵を垣間みせる童謡を持つ英国文化。そういう土壌で育ったジョン。虚無的になるのも当然か。
God
 God is a concept by which we measure our pain.「神とは概念だ」から始まるこの歌。それも、the concept ではなく、a conceptだ。ということは、one of the concepts「概念の一つ」つまり「似たような概念は他にもある」ということ。He is a friend.「彼は友だち(の1人にすぎない)」という軽い響きにも似て、自分たちの神が唯一至高の存在だといいたげなキリスト教圏の人々にはショッキングな一節だ。
 また、聖書の「はじめにコトバありき」という一節を思い出させる。概念とは記号だ。「神」という記号がニーチェが言うように「死んで」しまい、20世紀には「科学」や「お金」という記号がその地位に取って代わった。これから21世紀に生きる我々は、「科学」「お金」という概念で、ジョンが言うように、「その概念によって自分や他者の痛みを量ること(by which we measure our pain)」ができるのか? 不条理に受ける痛みがなぜ自分にふりかかるのかを納得させる「手だて」や、他者の痛みを推し量る「まなざし」を私たちは今持っているだろうか? この歌を聴くと考えてしまう。

■この歌にジョンの遺志を読みとる
 人生の達人は予見できるのだろうか? この歌には、成人になるショーンを見られないと気づいているジョンの悲しみが行間に浮かんでいる。
・「寝る前にお祈りを言いなさい。毎日、いろいろ良くなって行くから」
 自分のことだけ祈ったり、あるいは全く祈らない人ばかりの昨今。関係ない地域の関係ない人が祈るからこそ、荒唐無稽な祈りも実現することがあると信じて「沖縄独立(!)」を私は祈っています。
・「道を渡るときは手を取ってくれよ」
 こういう言葉をかけてもらえる子どもは幸せだ。子どもが生きる上で必要としていることは「信じてもらうこと」だ。信じることは愛すること、というが、溺愛や盲目的な依存とは違う。
 「うちの両親はお小遣いを受け取らないと、何か悪いこと(援助交際?)でもしているかと心配するから、要らないけど、貰っているの…」と語ってくれた、比較的裕福な家庭の女子高生がいる。彼女が切実に求めているのは信じてもらうことなのだ。
・「人生というのはね、他の計画を立てていて忙しくしている間のことを言うのさ」とショーンに向けて唐突に語られる人生訓。「結果」ではなく「過程」にこそ人生がある。「目的」「結果」だけを求めて邁進するアメリカ的な人生は破綻します、きっと。

■授業で扱う場合
・脚韻(fear / here  day / way  go / hoe)を空欄にして聞き取りで使える。
・映画『陽の当たる教室』で効果的に使われている。
・ドリームズ・カム・トゥルーがカバーしている。「あはは / BEAUTIFUL BOY」TOSHIBA EMI TODP-55003(1998.01.28)


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